【トリイスツール／渡辺力】籐家具のイメージを一新したジャパニーズ・モダンを代表する傑作チェア

QS-10 / トリイスツール [1956]

Designer：Riki Watanabe / 渡辺力

[日本/1911-2013]
　戦後の日本のデザイン界に燦然と輝く功績を残したジャパニーズデザインのパイオニア。ミラノトリエンナーレでは日本初の金賞を受賞。剣持勇、柳宗理、長大作、水之江忠臣らと共にジャパニーズ・モダンの先駆けとして活躍した。
【代表作】
「ヒモイス」「リキベンチ」「リキスツール」「ソリッドスツール」など。

Story & Features

　この「トリイスツール」という名前。実は作品名ではない。鳥居の形に似ているということから気付けばそう呼ばれるようになったそうだ。つまり、通称である。ただ、一度この名前を知ってしまうとしっくりきすぎて、それが通称だとは思えないから不思議なもんだ。
　端正なフォルム、見事なバランス。凛々しく自立する姿が美しい。籐という素材が生み出すしなやかでやさしい雰囲気は見ているだけでなんだかホッとする。正面から見るとシンメトリーになるデザインは、職人の技術があればこそのものだろう。座面がフラットではなく、曲面になっているのも見逃せない。座り心地を考えたデザインは美しさだけでなく、実用性も高いものに仕上がっている。
　それまでは暑い夏に活躍する季節家具という印象が強かった籐家具のイメージを一新した一作であり、椅子としての完成度も素晴らしい傑作。傷んでも修理をすることで長く使うことができるのも籐家具の魅力の一つ。暮らしに寄り添う一脚として考えてみてはどうだろう。