【ザ・チェア／ハンス・Ｊ・ウェグナー】それはまさに椅子の中の椅子

The Chair / ザ・チェア

Designer：Hans J Wegner / ハンス・J・ウェグナー

[デンマーク/1914-2007]
　北欧のデザイン界に燦然と輝き続けるデンマークの家具デザイナー。
【代表作】
「チャイニーズチェア」「ピーコックチェア」「Yチェア」など

Story

　発表された当初、人はこの椅子を目にも留めなかった。実際、展示会では「みにくいアヒルの子」と揶揄され、全く売れなかったのだ。ところが、である。この椅子の知名度を一気に押し上げる出来事が起こった。それが1960年のアメリカ大統領選。テレビ討論会であのジョン・Ｆ・ケネディとリチャード・ニクソンが座ったことをきっかけに、一夜にしてアメリカをはじめ世界中の人々の目を奪った。ウェグナーは生涯500種類以上もの椅子をデザインしているが、その中でも「最も完成度の高い椅子」として評されている。もともと「ラウンドチェア」と名付けられていたこの椅子は、今や世界中で愛されており、「椅子の中の椅子」として敬意を込めて「ザ・チェア」と呼ばれている。

Features

　シンプル・ザ・ベスト。派手さはなく、慎ましやかでおとなしい。主張することなく、ただそこにある。それなのに、空間へのフィット感が群を抜いてすごい。アームから背もたれへかけての優美な流線型と座るものを包み込む木のぬくもり。肘掛け（アーム部分）と笠木（背もたれ部分）のフィンガージョイントと言われる美しい接合部。毎日使う家具だからこそ、飽きのこないデザイン、美しいフォルム、座り心地が重要。見た目はもちろん大切だが、日常に溶け込める家具こそが最高なのかもしれない。そんなことを教えてくれる。